6月中のシーズン開幕を目指しているNPBですが、交流戦に続いて1951年から続いてきたオールスターも中止が決定し、開幕日をなかなか決められない状況が続いていますね。
台湾プロ野球は4月12日、韓国プロ野球は5月5日に開幕したものの、知ってるチームもほとんどなく視聴方法もよく分からないので、5月16日にサッカーブンデスリーガが再開されるまではスポーツ抜きの生活が続きそう。
そんな中、私が最近ヒマなときによく見ているのがYouTubeの「パルクール」動画。
パルクールとは、走る・跳ぶ・登るといった移動に重点を置く動作を通じて、心身を鍛えるスポーツ(運動方法)です。ただし、パルクールが包括しているフィールドは非常に幅広く、スポーツ(運動方法)という言葉だけで表現できるものではありません。 現在、パルクールは日本を含め世界中で様々なスタイルで実践されており、移動術、トレーニングメソッド、パフォーマンス、アート、ライフスタイルや哲学など パルクールの捉え方は多岐に渡っています。
フランスの軍事訓練から発展して生まれたパルクール。
私は最初スポーツだと思っていたのですが、全日本パルクール連盟代表理事の荒本英世氏によると、パルクールはスポーツではなくてトレーニングの文化、自分の体と身の回りにあるものを使って自分自身を鍛えていく概念がメインとのことです。
まるで忍者のように障害物を飛び越えたり、高い壁に昇ったり、高いところからきれいに受け身を取って降りたり。
人間ってこんな動きができるんだなぁと感心しながら見ています。
失敗すると高確率で大怪我を負いそうなので自分ではやりたくないけど上手な人のはいつまでも見てしまいますね。迷惑系のは絶対駄目だけど。
そのパルクールをトレーニングに取り入れるプロ野球選手が近年増えてきているらしいです。
筆頭株はオリックスの山岡泰輔。
昨シーズンは勝ち切れないイメージを払拭して13勝(4敗)を挙げ、勝率.765で最高勝率のタイトルを獲得。
172cmとプロ野球投手の中では小柄ですが、150キロを超えるストレートと球界一とも言われるスライダーを武器に体格のハンデを感じさせない活躍をしています。
実は山岡はツイッターでよくパルクールトレーニングの動画をアップしてるんです。
今日は練習前のアップを紹介します👌
練習前のアップでパルクールをします!
最初は難しかったですけど
上手く体のバランスを
取れれば出来るようになります🙆♂️
パルクールはバランス感覚の練習や
体を自分の思い通りに動かす
練習にもなります👍
pic.twitter.com/fCQXe6plSf— 山岡 泰輔 (@at091389) 2020年4月26日
一線級の投手だけあってさすがのバランス感覚ですね!
山岡は以前から体幹強化の効果があるといわれているAXFのネックレスを着けたりと、体幹やバランスには人一倍気を配っている印象があります。

少し気になったのは山岡がトレーニングで履いている靴。
地下足袋のように見えますが、パルクールの選手の中には足袋を好んで使用している人も多いそう。
地下足袋は接地感覚に優れていて丈夫で滑りにくいので、足場を組む鳶職の職人さん同様パルクールにも適しているらしいです。
山岡が履いているのは株式会社丸五さんが作っているスポーツジョグⅡという商品ですね。
紐がついていて一見スニーカー風です。
山岡は瀬戸内高校時代から広島にある「Mac’s Trainer Room BASEBALL」(マックズ)というジムに通っていて、そこでのトレーニングの一環としてパルクールを取り入れているそうです。
ジムの代表は2001年にオリックスにトレーナーとして入団し、MLBのワシントン・ナショナルズでも活動していた高島誠氏。
「ドライブラインに勝っている」「高校生なら140キロは絶対投げられる」など、これまでの経験と実績に基づいた自信溢れる発言が注目されている有名トレーナーです。
現在は2007年オフから開業したジムでの活動と並行して、各地の病院でのコンディショニングサポートや広島・武田高校野球部のトレーナーを務めています。
高島氏は投球パフォーマンスを高めるための要素として「筋力」「身体操作性」「筋出力」「柔軟性」の4つを挙げていますが、パルクールはそれらの能力を向上させる効率のよいトレーニングなのでしょうね。
その中でも身体操作は非常に重要な要素で、イチローさんをはじめ多くのトップアスリートが思い通りに体を動かす力の重要性を語っています。
前出の荒本氏も、自分の身体操作、身体感覚というものがきちんとできていない人は、競技・スポーツのために必要な技術が入ってこないと言っていました。
人間の基本動作が全て含まれていると言われるパルクールの動作を繰り返し行うことで、自分の体を思い通りに動かす力が自然と身に付くそうです。
さらにパルクールで鍛えられるのは運動能力だけではなく、思考力や問題解決能力、精神力など多岐にわたるとのこと。
パルクールの基本である、目標を定めその目標を達成するためにプランニングし実行する、失敗の許されない場面で結果を出すことなどは厳しいプロの世界でも必要不可欠な能力のような気がしますね。
マックズは投球パフォーマンスを向上させるためにパルクール以外でも様々なことを行っています。
特に、球質を数値化できるラプソードや肘へのストレスを計測することができるモータスなど最新の機器を活用した「ピッチデザイン」はこのジムの大きな特長。
打者は「抜けカット」が一番打ちづらいという話を聞いた山岡はラプソードやハイスピードカメラを活用して習得に励んでいるそう。
現在は多くの球団がトラックマンを導入し、投球の細部まで数値化できていますが、そのデータを活用して投手の理想のピッチングに近づけるということができない指導者が多いみたいですからね…
今の時代は、そういうアップデートできない指導者に代わって、テクノロジーを上手に使いこなして選手の進化を促せる新しいタイプの指導者が求められているのかもしれません。
その証拠に今年の1月には山岡に加え、オリックスからは杉本、近藤、榊原、ホークスからは高橋礼と松本裕樹、楽天・森原康平、阪神・高野圭佑、カープ・羽月隆太郎ら、有名プロ野球選手がマックズに集まり合同自主トレを行っています。
昨季新人王を獲得した高橋礼はもちろん、ストレートに凄みが増し飛躍の気配が感じられる榊原や64試合に登板し防御率1点台だった森原など、期待の投手がたくさん。
松本裕樹も3月のオープン戦で自己最速の152キロを出して、工藤監督に「オフの取り組みがよかったと思う」と褒められていたので期待できそうです。
今季無事に野球が開幕したら、ジャイアンツとホークスを応援しつつ、パルクールトレーニングを行った選手たちにも注目したいと思います。
山岡曰く、「結果が出ているから継続しているだけ。自分は高校の時から、何を言われても自分に合わないなと思ったらやらなかったし、それは今でも変わらない」とのことなので、合う合わないは選手によると思いますが、今伸び悩んでいる選手は試してみてもよいかもしれませんね。
コメント