2019シリーズ優勝に向けて着々?と戦力を整えているジャイアンツ。
補強方針や手段についてはいろいろと言われていますが、結局のところ成功か失敗かはシーズンが終わった時に分かることなので現時点ではなかなか点数がつけられないです。思うところはありますが…。
それでも原監督に交代してとれるだけの選手はとっているのでここ数年より戦力的にはアップしているはず…。お金もかなりかけてますしね。
そんなジャイアンツが2019シーズン優勝する上で、最大の壁になるのはやっぱりセ・リーグ3連覇を達成した広島東洋カープでしょう。
今回は、現在有料放送DAZN(ダゾーン)で放送されている”カープ優勝の軌跡”という番組の感想を交えながら広島カープの強さについて書いてみたいと思います。
盤石とはいえなかった広島投手陣
今季、広島投手陣の防御率は4.12。
これは巨人3.79、阪神4.03に次ぐ3番目の成績で、これまでの9度のリーグ優勝の中で最も悪い数字でした。
防御率4点台でのセ・リーグ優勝チームは1978年のヤクルト(4.38)、1985年阪神(4.16)と今季のカープのたった3チームしかありません。
投壊とはいえないまでも盤石ではなかった投手陣でなぜ優勝することができたのでしょうか。
2段モーションの恩恵を受けた大瀬良
貢献度が最も高かったのは、防御率2.62、WHIP1.00、奪三振率7.86、15勝7敗と素晴らしい成績を残したセ・リーグ投手2冠のエース大瀬良大地。
ジャイアンツファンながらカープの中では一番好きな選手なので、昔から大瀬良くんの試合の時はたまに見ていたのですが、今季はこれまでと明らかに投球内容が違っていましたね。
2017年は勝敗こそ10勝2敗でしたが、防御率3.65、WHIP1.28、奪三振率6.73だったので全く別人です。
ダゾーンでは12年ぶりに解禁された2段モーションによって劇的に良くなったといっていました。(具体的にはリリースポイントの読めない投球フォームになったとのこと)
去年の途中から歩幅を狭めたフォームに変更していたと思うのですが、その時は上半身との連動性があまり良くなさそうな感じだったのに、今季は2段モーションに変更してテイクバック時の左手の位置を高くすることで力感なくスムーズに投げていた気がします。
このフォーム変更にはカープのレジェンド黒田さんも一役買ったようで、オフの間に食事をしながら大瀬良くんに技術的なアドバイスを送ったようです。
それからフィジカル面もかなり鍛えたのか体も1年で見違えるように大きくなっていましたね。
大瀬良くんの理想は「バッターが分かっていてもバットに当たらないボール」を投げること。
来年もジャイアンツにとって難しい相手になりそうです。
新戦力とベテランの頑張り
今季カープ投手陣がイマイチだったのは、2017シーズンに好成績を残した野村、岡田、薮田、ジャクソン、今村、中田あたりが1年を通して不調だったことに他なりません。
特にリリーフ陣はひどい状態だったみたいですが、新戦力とベテランの3人の力で乗り切りました。
1人目はアドゥワ誠。53試合6勝2敗5H防御率3.74。
アドゥワは2016年ドラフト5位入団の20歳ですが、196cmの長身から投げ下ろす動く球を武器にリリーフ陣を支えました。(球団最年少19歳6か月で初ホールドを達成)
2人目はヘロニモ・フランスア。47試合3勝4敗19H防御率1.66。
フランスワはドミニカのカープアカデミー出身で今年カープと育成契約を結び5月に支配下登録された新戦力です。
160キロ近いストレートとスライダー、カーブ、チェンジアップによる驚異的な奪三振力(11.22)が魅力の本格派左腕で8月にはNPBタイ記録である”月間18試合登板”も達成し、リリーフ陣を引っ張りました。
今年のカープを代表する選手の1人ですね。
そして最後の3人目はプロ16年目のベテラン永川勝浩。
743日ぶりに1軍登板を果たした永川は、22試合2勝0敗5H防御率4.82と1年を通しての成績は微妙でしたが、6月6試合防御率1.42、7月9試合防御率0.00と夏場の苦しい投手陣を懸命に支えていました。
江夏も認めた絶対的守護神
試合を締めるカープの絶対的守護神中崎翔太。
今季は68試合4勝2敗32S防御率2.71と安定した数字を残し、8月には球団最年少25歳11か月での100Sも達成しました。
2016、2017と防御率1点台だったので今季は思ったような成績ではなかったかもしれませんが、それでも9回を守る守護神が決まっているのは強いチームの証のようなもの。ジャイアンツファンは特にそう思うはず…。
前人未到のシーズン401奪三振を達成した江夏豊さんも「中崎くんは技術もさることながら精神的に強い方なんだなと思いますよね。本当に苦しい抑えという仕事をものの見事にこなしていた。よくやってるなよくやったなと思います」と中崎を褒めていました。
中崎の評価は敵味方ともにあまり高くないような気がしますが、中継ぎ、抑えと先発以外のポジションが重要になっている昨今、カープの3連覇に最も貢献した選手の1人だと個人的に思っています。カープの中では好きな選手の1人ですし。
来年の対広島戦はこの人が登板しない試合をたくさん見たいものです。(もちろん勝っている状態で)
カープの守備力と機動力
カープといえば高い走塁意識と堅実な守備というイメージがあります。
今季のジャイアンツ対カープの試合は全試合見ましたが、守備でも走塁でも本当に苦しめられたなという印象です…。
特に走塁に関して、いつの試合かは忘れましたが何度も連続で1塁3塁の状況を作られて試合を見るのも嫌になったような気がします(笑)
守備職人菊池涼介
鉄壁の守備というイメージがある広島カープですが、意外にも今季のチームUZRは-21.4と12球団中8番目(セ3位)。
2016年が30.4で2番目(セ1位)、2017年が28.5で3番目(セ1位)だったので、今季はかなり数字を落としたようです。
そんな中でもセカンドUZRランキングでトップ(9.6)だったのがカープが誇る守備職人菊池涼介。
今季も得意の”攻める守備”で何度もチームを救っています。
守備範囲(RngR)は2017年が-3.2、今季が0.4とかなり狭くなっていますが、併殺貢献(DPR)や失策防止(ErrR)はさすがの数字。
指標的にはヤクルトの山田もすぐ後ろにいるので来季もトップを守れるかは分かりませんが、できればセカンドには転がしたくないですね。
カープ最大の武器は走塁
個人的にカープで一番恐いのは走塁だと思っています。
セ・リーグ最多95個の盗塁をきめる機動力もさることながら基礎的な走塁能力や意識が高い選手が多い印象。(というよりカープの選手は皆できている)
田中や野間、菊池、西川、安部など、足の速い選手も多いですし。
上の画像のような場面でもカープの選手はほぼ打球判断を間違えません。
ジャイアンツも含め他のセ・リーグのチームはここで2塁に止まってたりしてるのをよく見ましたが…
カープの選手たちは1つでも先の塁へという意識が徹底されているので、少しでも雑な守備をすると一気にピンチを広げられてしまいます。
それからもう一つ印象的なのが、どの選手も絶対1塁まで全力疾走してること。(画像はメヒア)
これはベテランの新井さんも含め全員が徹底してました。
どこのチームも若手はほぼできている気がするけどベテランと呼ばれるような選手はあまりできてないですね。ジャイアンツでも外野ゴロになりそうなのが何人もいます…
走塁のプロフェッショナル髙橋慶彦さん曰く、常に全力疾走することで守備に失敗が出る可能性が増えるとのこと。
いつも相手にプレッシャーをかける意味でも全力疾走を怠ってはいけないと言っていました。
もともと足を使った攻撃はカープのお家芸といわれてますが、現在の監督は95~97年まで3年連続で盗塁王を獲得してる緒方さんなので、より高いレベルの指導が行き届いているのでしょうね。
カープの圧倒的な得点力
最後は今季721得点と2位のヤクルトに63点差をつけてダントツの1位だった得点力。
上位から下位まで打てる選手が揃っているので、投手にとっては息つく暇もない嫌な打線だったと思います。
うちのエース菅野もカープの絶え間ないプレッシャーで徐々に体力も精神も削られていき最後にノックアウトという展開を何度か見ました…。
他のチームを寄せつけない圧倒的な攻撃力は今季も健在でしたね。
打てる捕手會澤翼
2年連続セ・リーグベストナインの會澤。
今季は大瀬良くんとの最優秀バッテリー賞も獲得し、球団捕手シーズン最多本塁打13本も達成しています。
會澤は”キャッチャーが打てば点に絡む”、”下位打線だからといって舐められないように”という考えを持った攻撃的な打てる捕手。
規定打席未到達ながらも打率.305、13HR、42打点、OPS.893は本当に立派な数字でした。
カープの7番8番の平均打率は.284と.276と、下位打線とは思えない数字なのですが、これは會澤の存在が大きいと思います。(8番會澤は打率.343)
江夏さんは「日本のプロ野球は現在全体的に打高投低の時代なのに、キャッチャーはどこのチームも若干弱い、その中でカープには會澤という素晴らしいキャッチャーがリード面でも打撃面でも成長したのがチームの強み」と言っていました。
逆転のカープ
今季リーグ最多41回の逆転勝利と9度のサヨナラ勝ちを収めたカープ。
カープは先行逃げ切りの戦い方と後半追い上げの戦い方の両方ができる、まさに戦上手といった感じですよね。逆に今季のジャイアンツは先制されたらほぼ終わりでした…
今季印象に残っている逆転劇はジャイアンツファンの半数が挙げるであろうあの試合じゃないでしょうか…。
7点差を追いついて延長戦にもつれ込んだけど、延長10回に下水流のサヨナラ2ランホームランで負けた7/20の試合です。
リーグ優勝を何度も繰り返し、勝ち続ける中で勝者のメンタリティを持つ選手が増え、逆境でも諦めない強さがチームに生まれているのかもしれません。
そんなカープの中で私が一番恐い選手はやっぱり鈴木誠也。
今でも十分バケモノ級のバッターですけど、数年後には今のギータ以上になるかもしれません…。
昨年8月に右脛骨内果剥離骨折の大怪我を負った時には、残念だけど今までのようなプレーはできないだろうと思っていたらパワー型になって帰ってくるし、この人は全く底が見えません。
来季も鈴木を中心に数多くの逆転劇が生まれそうです。ジャイアンツ以外のチームでよろしくです。
さいごに
記事を書くのにデータなどを見ているとやっぱりカープは強いなと再確認させられます。
けれども、来季ジャイアンツが優勝する確率は低くないとも思っています。
それはもちろんこの人がジャイアンツに来てくれたから。
実は今回のダゾーン特集でも、かなり長い時間に亘ってカープでの丸の貢献度の高さが語られていました。
彼がどれだけ素晴らしい選手かというのは今更書く必要もないですね。
上位打線を返す役割、下位打線につなぐ役割の両方を完璧にこなすチームの柱が丸佳浩という選手。
丸が抜けてもすぐに同じレベルの選手が出てくるという話もたまに聞きますが、それはなかなか難しいのではないでしょうか。2年連続リーグMVPの代わりですから…
それに丸が3番にいたからこそ4番の鈴木や5番の松山が力を発揮できていた部分もあり、その相乗効果は失われることになると思います。
ただ、数年経てばバッティングセンス抜群の坂倉あたりが外野にコンバートされて丸の穴を埋める…なんてこともありえると思うのでそれまでになんとか優勝したいところ。
丸にはカープという強いチームで培った技術や経験をジャイアンツにも伝えてもらって、気負うことなく野球をしてもらいたいですね。
それから、来季のカープにはチームの精神的支柱だった新井さんもいません。
最年長なのにベンチで誰よりも声を出してチームを鼓舞していた新井さん…。他チームのファンながら少し寂しいですね。新井さんには苦しめられましたけど。
個人の成績以上にチームの力を底上げする力が新井さんにはあったと思います。
丸が抜け新井さんが抜け、これでようやく互角といったところでしょうか。
正直、原ジャイアンツのやり方はサッカーでいえばドイツのバイエルンのようなのでファンとしても少々複雑な気持ちですが、2019シーズンはカープの4連覇を阻み、久しぶりの優勝を見せてもらいたいです。
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