あけましておめでとうございます!
2019年が皆さんにとって素晴らしい年になりますように…。
のんびり年始の空気を楽しみながら仕事にとりかかる準備をしていたのですが、YAHOO!JAPANニュースのトップに掲載された記事のタイトルに「小林」というワードが見えたのでついつい読んでしまいました。
その記事はスポーツジャーナリストの鷲田康氏がNumberWebに寄稿した「巨人・小林誠司が生き残るために、打撃だけではない重要な課題とは。」というもの。
記事をざっと説明すると…
小林自身は打撃力を向上させることが正捕手への条件と考えているが、打撃面だけではなくリードや審判の判定に”腰を使ったり”ミットを動かすなどの欺瞞的な動作を改善しなければ、谷繁氏が「日本一」と評価するキャッチング技術や絶妙なフットワークを持つ炭谷には勝てないといった内容でした。
多分鷲田さんだろうな…と思いながら読み進めているとやっぱりそうでした(笑)
鷲田さんは元報知の記者だけあってジャイアンツの記事を書くことが多く、以前から小林についてもよく触れてるんです。
結構厳しい内容のものが多くて前まではカチンとくることもありましたが、とげとげしい中にも大きな”期待”が込められているのが分かってからは穏やかな気持ちで読めるようになりました。小林批判に定評がある谷繁氏に少し毒されすぎですが…
でも、今回の記事はうーんと思うことが多くて…
特に気になったのは小林に対する守備評価の低さです。
鷲田さんは数か月前にも「日本を代表する名捕手への絶対条件。小林誠司よ、審判の信頼も勝ち取れ!」という記事で、小林が”腰を使う”ことで審判の心証を害しストライクをボールに判定されるケースが多くなっている気がすると主張していました。
この”腰を使う”というのは審判用語らしいのですが、おそらくセルフジャッジのことだと思います。
審判がコールする前に自分でストライクと判断して腰を浮かす仕草のことを言っているんでしょうね。
セルフジャッジやミットを動かす行為によってストライクをボールにされている、そしてキャッチングやフットワークで炭谷に負けているという鷲田さんの主張は本当に正しいのか?
そう思っていろいろと調べていたら、DELTAさんが2018年度の捕手守備評価(打撃は関係なし)の記事を発表していました。記事へのリンクは本記事最下部に貼っています。
DELTAさんはデータを統計学的見地から客観的に分析し、選手の評価や戦略を考える分析手法「セイバーメトリクス」の視点からプロ野球を分析している組織です。
結論から言えば、小林の際どいコースをストライクにする技術「フレーミング」の評価は全捕手中1位、セイバーメトリクスに精通したDELTAアナリスト8人による総合的な守備貢献評価も全捕手中1位でした。
DELTAによる2018年捕手フレーミング評価
選手 | 守備回 | フレーミング 機会 |
CSAA | CSAA /5000 |
フレーミング 得点 |
フレーミング 得点/5000 |
||
1 | 小林誠司 | G | 794 | 4742 | 109.4 | 115.3 | 12.6 | 13.3 |
2 | 梅野隆太郎 | T | 1054 | 6383 | 82.6 | 64.7 | 9.5 | 7.5 |
3 | 松井雅人 | D | 626 | 3996 | 38.0 | 47.6 | 4.4 | 5.5 |
4 | 中村悠平 | S | 968 1/3 | 6009 | 16.1 | 13.4 | 1.9 | 1.5 |
5 | 甲斐拓也 | H | 919 2/3 | 5789 | 11.0 | 9.5 | 1.3 | 1.1 |
6 | 清水優心 | F | 591 1/3 | 3292 | 2.2 | 3.3 | 0.2 | 0.4 |
7 | 嶋基宏 | E | 923 | 5745 | -7.0 | -6.1 | -0.8 | -0.7 |
8 | 森友哉 | L | 666 1/3 | 4670 | -10.5 | -11.3 | -1.2 | -1.3 |
9 | 鶴岡慎也 | F | 514 1/3 | 3068 | -12.5 | -20.4 | -1.4 | -2.4 |
10 | 會澤翼 | C | 789 1/3 | 5188 | -26.2 | -25.3 | -3.0 | -2.9 |
11 | 嶺井博希 | DB | 592 | 3752 | -32.8 | -43.7 | -3.8 | -5.0 |
12 | 若月健矢 | B | 832 | 4911 | -53.9 | -54.9 | -6.2 | -6.3 |
13 | 田村龍弘 | M | 1157 2/3 | 7135 | -101.4 | -71.1 | -11.7 | -8.2 |
CSAA(平均的な捕手と比較してフレーミングで増やしたストライク)を見ると分かるように小林は4742回のフレーミング機会で、平均的な捕手と比べて109.4個ストライクを増加させています。
実際にプレーを見ていると少しミットを動かしすぎている気もしますが(特に左右)、数字を見れば問題なく機能しているようです。
ちなみに2018年度の炭谷は正捕手扱いではなかったので対象になっていませんが、同じような測定方法で算出した2017年度の成績では最下位でした。
画像参照:NPB捕手のフレーミング能力に迫る
個人的にNPBでフレーミングが上手だなと思うのは阪神の坂本誠志郎捕手、MLBでは皆すごい中でもフラワーズやマルドナードが印象に残っています。
随分前に球辞苑のフレーミング特集でフラワーズが「フレーミングはボールをストライクにする技術ではなく、ストライクをしっかりストライクに判定してもらう技術」というようなことを言っていて非常に感銘を受けました。
MLBではかなり前から「フレーミングは捕手にとって必要不可欠な技術」として認識されているようですね。
話を戻しますが、小林は盗塁阻止や捕逸抑止、打球処理においても全て平均以上を記録しており、数字を見る限り鷲田さんの主張する審判の心証によるストライク率の悪化やキャッチングの技術、フットワークの技術が劣っているようには思えませんでした…。
印象ではなくはっきり数字を見て評価するなら、小林の守備能力はNPB全体で見ても間違いなく上位です。
よく言われるリードの良し悪しについては、堀内さんがブログで書いている意見と同じで捕手の評価を決める大きな要素にはなりえないと思います。
リードに関しては論ずるのはやめようね。キャッチャーをリードで評価する話もよく聞くけれど俺からするとねまずピッチャーがそこに投げられるかどうかだから。
菅野クラスになればリードうんぬんの話も出来るけど巨人のピッチャー陣は総じてまだまだそこまでいってないからね。
となるとやっぱり課題は打撃面。
リードや審判の心証、数字に表れないあれこれなど、見えないものを追いかけるよりも出来る限り出塁率を上げることや大事なところでしっかりバントを決めることの方がよほど重要ではないかと…。
打撃面を向上させ、試合を通して集中力を途切れさせないようにすれば正捕手1番手は間違いなく小林だと思います。
2019年度は控えからの苦しいスタートになるかもしれませんが、シーズンが終わる頃には優勝争いをしているチームの正捕手として活躍している姿が見たいものです!
今回のDELTAさんの記事は捕手の守備評価にとって欠かせない要素であるフレーミングを評価に算入し、より精度の高い捕手の守備評価を試みているので興味がある方は是非読んでみてください!
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