阿部慎之助新監督は、読売ジャイアンツの監督就任に際し、自身の指針や信条をまとめた「クレドカード」を作成しました。
クレドカードとは、組織の理念や行動指針を記したカードのことで、阿部監督は選手やスタッフ全員に配布し、チーム全体で方向性を共有することを目指しています。
阿部新監督の「クレドカード」の内容
阿部監督が作成した「クレドカード」には、監督方針や選手に求めるスキル、ジャイアンツの目指すべき姿などが端的に記されています。※写真から読み取った内容ですので、正確性は保証できません。
MANAGER’S POLICY~監督方針~
- 勝利のために自己犠牲ができる選手を起用する
- 成績だけの昇降格はしない
- 結果が大事だがプロセスを重要視する
- トライアル&エラー 失敗から学ぶ
- チーム内競争を促す
- 5つのスキルを備える
5SKILLS~5つのスキル~
- 素直さ
性格、態度が穏やかでひねくれない - 謙虚さ
高い地位であっても、控えめな態度、相手の意見を受け入れる - 継続力
物事を諦めず取り組み続ける能力 - 献身性
一身をささげ、自分の利害得失を考えないで人や物事に尽くす - 思考力
自分の経験や持っている知識をもとに考える能力
WORDS OF GIANTS~未来につなぐ言葉~
- 我が巨人軍は永久に不滅です。 長嶋茂雄
- ジャイアンツは、今後もパイオニアで在り続けないといけない。 阿部慎之助
- 球団の人も、選手たちも「リーダーである」という意識を。 王貞治
- 「ファンと共に」という気持ち。「ジャイアンツの選手というプライド」。 原辰徳
- ジャイアンツは勝つだけではダメ。ファンやメディアの方を受け入れること。 松井秀喜
- 常勝を目指すためのビジョンを関係者全員で統一しないといけない。 もう少し1つの勝ちにがっついても良いのではないかと思います。 高橋由伸・上原浩治
- 強いジャイアンツを継承していくことは。ジャイアンツの選手の使命。 阿部慎之助・坂本勇人・岡本和真
- ジャイアンツの18番は球界のエース。取り組む姿勢も大事。 桑田真澄・杉内俊哉・菅野智之
GIANTS WAY~「ジャイアンツとは、何か?」を定義する~
GIANTS WAYは、私たちの行動を導き、栄光の未来に続く道であり、この先も永久に不滅な球団として存在し続けるために、全ての関係者が共通認識として持っていたい道標である。
PHILOSOPHY~哲学(正力松太郎 遺訓)~
巨人軍は常に強くあれ 巨人軍は常に紳士たれ 巨人軍はアメリカ野球に追いつき、そして追い越せ
1WAY~MISSION:存在意義~
野球を拓き、夢を拓き、時代を切り拓く。
9RULES~VISION:目指したい姿~
- 野球
- ファン
- 勝利
- 育成
- 普及
- 女性
- 地域
- 世界
- 社会
4COLORS~VALUE:行動指針~
- Gentle-White
礼儀正しく、誠実に振る舞う。 - Pioneer-Black
球界や時代を牽引し、新たな未来を切り拓く。 - City-Gray
日本を代表する名門チームとして、東京の魅力発見と価値向上を促す。 - Family-Orange
親切で包容力があり、共にある一体感を大切にする。
「クレドカード」作成のきっかけと太平洋クラブとの関係
阿部監督が「クレドカード」を作成するきっかけとなったのは、高級会員制ゴルフクラブである「太平洋クラブ」の代表取締役社長韓俊(ハン シュン)氏との出会いと言われています。
韓俊氏との出会い
韓俊氏は破綻寸前だった太平洋クラブを再建した立役者であり、その再建の鍵となったのが、「マルハン」で採用されていた人材育成システム「イズム」を太平洋クラブに導入したことでした。
パチンコホール最大手企業マルハンの創業者である韓昌祐氏の三男で、同社の北日本カンパニー社長も務めている韓俊氏。
韓俊氏は、次男の韓裕(ハン ユウ)氏の影響を受けて子供の頃から野球漬けの生活を送り、中央大学に進学しました。
ちなみに、兄の韓裕氏は法政大学野球部出身で、高校時代は京都商業でレギュラーとして活躍。決勝まで勝ち進みましたが、金村義明氏率いる報徳学園高に敗れ、準優勝に終わっています。
阿部監督は、2022年に知人を介して韓俊氏と初めて出会いました。
同じ中央大学出身ということもあり、意気投合した阿部監督は、韓俊氏から「イズム」について学び、感銘を受け、ジャイアンツでも同様の取り組みを始めることを決意したそうです。
太平洋クラブ再建ストーリー
太平洋クラブの再建の様子は、ノンフィクション作家の野地秩嘉氏の著書「名門再生:太平洋クラブ物語」に詳しく描かれています。
この本では、韓俊氏がいかにして「イズム」を太平洋クラブに導入し、組織を変革していったかが丁寧に記されています。
阿部監督も、この本を通して太平洋クラブ再建の過程を学び、「クレドカード」作成の参考にしたのかもしれません。
少々昭和のニオイが漂う内容ではありますが、私は勉強になる部分も大いにある悪くない本だという感想を持ちました。
「クレドカード」の意義と課題
阿部監督の野球観や大切にしているスキル、選手に求める姿勢が端的に示されている「クレドカード」。
これは選手たちの指針となり、チーム全体の方向性を示すものとなっています。
プロ野球選手という立場ゆえの課題
一方で、プロ野球選手は「個人事業主」であり、「会社員」とは立場が異なります。
結果を残さなければ生き残れない厳しい世界で、いかにしてチーム全体の方向性と個人の目標とを一致させていくかが課題となるでしょう。
近年は他チームの選手と一緒に自主トレを行う選手も増えてきており、それに対して苦言を呈する評論家もいますが、プロ野球選手として生き残るためには仕方がないのかもしれません。
なぜなら、選手が戦わなければいけないのは相手チームではなく、同ポジションのライバルだったり、自分を査定する自チームだったりするからです。
個人的にはそのあたりの折り合いをいかにつけられるのかが、このジャイアンツ改革が成功するかどうかの最大の課題ではないかと思っています。
まとめ
阿部慎之助新監督が作成した「クレドカード」は、選手やスタッフ全員で共有することで、チーム全体の方向性を示すものとなっています。
その作成のきっかけには、太平洋クラブ代表取締役社長の韓俊氏との出会いと、マルハンで採用されていた人材育成システム「イズム」への共感がありました。
プロ野球選手という立場ゆえの課題はありますが、阿部監督は「クレドカード」を通じて、ジャイアンツという伝統球団を改革しようとしています。
勝利を追求するだけでなく、人間的な成長も重視する姿勢は、かつての「2008年ドラフト組」の反省から生まれたものかもしれませんね。個人的に、この試みには大いに好感を持っています。
一方で、采配面、特に送りバントの多用についてはやや疑問に思うところがあります。
現代野球において、アウトを無駄に消費する戦術は再考の余地があるでしょう。ただし、これはあくまで監督就任1年目の手探りの部分であり、今後の成長に期待したいと思います。
「クレドカード」に示された方針を貫き、選手とのコミュニケーションを深めながら、チームを勝利に導く采配を身につけていってほしいですね!
新監督のもと、ジャイアンツがどのようなチームに生まれ変わっていくのか。
伝統の読売ジャイアンツが新しい時代に適応し、より強く魅力的なチームへと進化していくことを心から期待しています。
参考記事
以下の記事は、本記事で紹介した野地秩嘉氏の著書『名門再生:太平洋クラブ物語』の内容を要約したものです。太平洋クラブの再建について興味のある方はご一読ください。
コメント
もし自分がドラフトにかかるような選手なら、こんなの見せられたら、とてもその球団に入りたいとは思わないだろうなー。なんか楽しく野球ができそうにないですよね(笑)ファンとしても選手にあまり厳しすぎるような監督やコーチというのも今の時代ちょっとね。選手になめられるようじゃ駄目だけど、選手の良さを引き出し気持ちよくプレーさせてあげてほしいです。ひょっとしてこのクレドカードが原因で選手が萎縮してバント失敗連発してたりして。
恥ずかしながら巨人ファンさん、コメントありがとうございます。
今の世代には合わなかったり、特に巨人ファンでも何でもない選手が見たらギョッとする部分もありそうですね(^^;)
ただ、野球しかしてこなかった人も多いので人間教育というか、そういった側面もあるんでしょうか。
意識を共有して組織として全体を強くしていくには悪い事ではないのかもしれませんね。
まあ、締め付けすぎない程度に結束を強めて欲しいです。