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今年もいよいよ夏の甲子園の季節がやってきました。
プロ野球もさることながら、高校野球も大好きな私にとっては非常に忙しい時期でもあります。
さて、甲子園予選も佳境を迎え、出場校がぽつぽつと決まり始めましたね。
本戦はもちろんのこと、こうした地方予選での甲子園出場をかけた闘いにもいろいろなドラマがあるんだろうなと思いを巡らせてしまいます。
そんな時期になると必ずといっていいほど読み返したくなるのが、高校球児たちの青春を描いた野球漫画。
野球の漫画というと、やはり高校球児が甲子園を目指すというお決まりのストーリーが多いですが、その王道こそが読者を感動させ、球児たちに憧れや夢を抱かせているんでしょうね。
私も、そんな王道に心魅かれる読者の一人です。
そんな私のお気に入りの野球漫画を紹介したいと思います。
漫画 おおきく振りかぶって
すでに広く知られている漫画ではありますが…
おおきく振りかぶって(おお振り)は、講談社の月刊アフタヌーンで2003年より連載されている作品で、埼玉県を舞台にした西浦高校という学校の球児たちの物語です。
作者はひぐちアサさんという女性の方。
これまで野球漫画を大ヒットさせたのは男性作家ばかりというなかで、ひときわ異彩を放っています。
漫画そのものもこれまでの野球漫画とは少し違っていました。
とにかくリアルで細かい描写が一番の特徴で、1打席どころか1球ずつの勝負が丁寧に描かれています。
投手の心情、捕手の心情、打者、監督の心情などが1球ごとに展開されて、これこそが野球経験のない私にとっては魅力的でした。
しかしそのため、物語の進行は非常に遅いです。作者の産休もあったしね。
初めての公式戦1試合で描かれたページはなんと700ページ4巻分。
すさまじい長さですが、それを長いと思わせない面白さがあるのがすごいところ。
主人公たち西浦ナインが全く登場しない試合ですらかなりの尺を取っていたりします。
試合以外にも注目したいのは父母会の何気ないやり取りなど。
そんなところまで妙にリアルで
「あ~わかる!」
とか
「こういう保護者、いるいる!」
といった共感が盛りだくさんです。
こういった細かいところのリアルさは、作者の緻密な密着取材の賜物でしょうね。
作者は西浦高校のモデルにもなっている母校、浦和西高校に20年近く通い高校野球というものを観察し続けたそうです。
部活だけでなく、野球を通しての親子関係にもスポットが当てられていて、いろいろな視点から高校野球を楽しめる作品だと思いました。
また、今までのような根性論・精神論だけではないデータなどを用いた近代野球感もこの作品の特徴の一つです。
作中では体の仕組みから故障について深く掘り下げたり、故障を防ぐための体作りやバランストレーニング、メンタルトレーニングにも着目して丁寧に説明されています。
この、実際に取り組みやすい内容が作品のリアルさをより演出しているわけですね。
そのほか、コミックスの余白ページでは事細かにルールを解説してくれていることも。
かなり書き込みが多く、作者の野球に対する情熱を感じられます。
ちなみに…私のひそかな楽しみはコミックス本編に目を通したあと、最後にカバー裏のおまけ漫画を読むことです。
参照:おおきく振りかぶって7巻より
アニメ おおきく振りかぶって
「おお振り」は、2007年と2010年に二期にわたってアニメ化されました。
アニメでは、野球につきものである音の情報が加わって、漫画とはまた一味違った面白さを楽しむことができます。
製作スタッフのこだわりにより作中効果音は実際の高校球児が練習している音が使われているとか。
漫画では書き文字で細かく表現されていた応援の時の音もブラスバンドで再現されていました。
さらにこの作品では、野球アニメでよくある大げさなハッタリのアングルや演出をあまり使わないよう意識されていて、ピッチャーの手元を離れた球がキャッチャーに到達するまでの時間や塁間を走るタイムなどもできるだけ実際のものと同じくらいになるよう描かれています。
ほかにも、ピッチャーの後ろで守備についている野手のさりげない動きや、キャッチャーマスク越しの景色など、とにかくリアルにこだわった映像でした。
オープニング・エンディングに使われた楽曲は…
- ドラマチック (Base Ball Bear)
- 青春ライン (いきものがかり)
- 夏空 (Galileo Galilei)
- メダカが見た虹 (高田梢枝)
- ありがとう (Sun Set Swish)
- 思想電車 (チュール)
どの曲もさわやかで、いかにも青春と言った感じ。
中でも第二期、夏の大会編のOPでは、コミックスの表紙イラストを映像にして繋げるという原作ファンにはたまらない小粋な演出がなされています。
これまでにアニメ全40話を10回以上は観たでしょうか…。
私にとっておお振りは夏の甲子園の時期と春のセンバツ、そして太陽が恋しい真冬の時期にも見返したくなってしまう作品なのです。
あらすじ
自分の祖父が経営する中学校の野球部で、球が遅いにもかかわらずエースを任されていたことでチームメイトたちと上手くやれず、野球を諦めかけていた主人公三橋 廉(みはし れん)
そのチームメイトたちから逃げるように隣県の西浦高校に進学した三橋は、高校では野球をやらないと決めつつも、気になって見に行った野球部の練習で投球を披露することになります。
西浦高校野球部は軟式から硬式に変わったばかり。
1年生ばかりで部員も少なく、監督は女性という新設野球部にまだ投手はいませんでした。
そこでもまた失望されるんじゃないかと二の足を踏んでいた三橋ですが、三橋のクセ球と抜群のコントロールに気付いたキャッチャー阿部 隆也(あべ たかや)の「お前をホントのエースにしてやる」と言う言葉に心を動かされ、高校でも投手として野球を続けることを決めます。
エースであることにこだわりながらも自信を持てない投手三橋を盛り立てながら、10人の部員たちと監督、マネージャーが甲子園を目指して少しずつチームの形を作っていく…というお話です。
参照:おおきく振りかぶって1巻32ページより
主な登場人物
三橋 廉(みはし れん)
西浦高校のエース。
昔はよく笑う活発な子供だったけど、中学時代の暗い思い出のせいで自分に自信が持てず常にビクビク…。
大きな声に怯えたり、自分の言いたいことをなかなか言葉にできないという、野球漫画ではなかなか珍しいタイプの主人公です。
作中でも三橋のセリフは心の声が多く、実際に口に出す言葉はしどろもどろだったりカタコトだったり。
体の線も細くなんとも頼りない三橋ですが、投げることが大好きでマウンドを誰にも譲りたくないという気持ちだけは人一倍。
弱気なわりに頑固で、しばしば周囲を驚かせます。
ほかのチームメイトに比べて精神的に幼い部分が多々あり、チームの中では末っ子的に扱われているような感じですね。
投球に関しては、初めはMAX101キロだった球速が、トレーニングにより少しずつ速くなってきています。
しかし何といっても三橋の一番の武器は、ひたすら投げ込んで身につけたストライクゾーン9分割に投げ分けられる抜群のコントロール。
そのコントロールと独特のクセ球が、チームに甲子園を目指すきっかけを与えました。
阿部 隆也(あべ たかや)
西浦高校の正捕手で副主将。
データをもとに投球を組み立てる頭脳派の捕手で、チームメイトに「配球オタク」と言われるほど。
試合中は阿部の頭の中にある配球についての思考でページがいっぱいになることも。
自分のリードに自信を持っていることに加えて過去の経験から投手不信になっているため、マウンドで自己主張せず確実に自分の要求どおりのところに球を放れる三橋を理想的なエースとして評価しています。
なので三橋の投球のコントロールに一番こだわっているのは間違いなくこの人。
性格はやや短気で、特に投手のことになると熱くなりがち。
三橋に対してはかなり過保護で球数や食事、体調やそのほかの日常生活に至るまですべてに気を遣い、うるさく口を出してきます。
体育祭の出場種目まで阿部が決めちゃう。
試合中も打席や走塁で三橋が怪我をしないか、気が気じゃない様子の阿部。
すぐに大声で注意してしまうため小心者の三橋となかなか上手くコミュニケーションが取れず、気苦労が絶えません。
作中もう一人の主人公とも言える人物です。
田島 悠一郎(たじま ゆういちろう)
三塁手。
類稀な野球センスを持ち、他の強豪校からも声がかかるほどの選手。
走攻守全てで身体能力の高さを存分に発揮し、監督である百枝まりあからは「間違いなくスター」「素材の次元が違う」と評されていました。
チームメイトたちからの信頼も厚く、田島本人も自分の立ち位置をわかっているのでどんなときでもポジティブに振る舞い、精神的にもチームの支えになっています。
明るいムードメーカーで、コミュニケーションの苦手な三橋にも屈託なく接し、時にはお兄ちゃんのようにフォローしてくれることも。
普段は無邪気な男子高校生ですが、野球に関してだけでなく、日常生活においても鋭い観察眼で物事の本質を見抜くような発言がよく飛び出します。
そんなずば抜けた才能を持つ田島の唯一の弱点は体が小さいこと。
出塁率は高いのですがHRは期待できません。
そのため、体の大きな主将・花井 梓(はない あずさ)に純粋な対抗心を燃やしています。
花井 梓(はない あずさ)
右翼手。
しっかりもので面倒見がいい性格のため、部員たちプラス監督からの満票をもってして主将に選ばれました。
文句を言いながらも、個性的なメンバーが集まる部をまとめるため日々奮闘しています。
中学でも主将を務め四番を任されていた自負から、当初は田島に対してライバル心を燃やしていましたが、田島のすごさを知るほどに力の差を痛感している様子。
田島の実力を認め、二番手で納得しかけていたところでしたが、監督に打順争いを仕組まれた形?で成長を促されています。
実際、チームいちの長身で長打力のある花井は監督からの期待も大きく、彼の成長がこのチームの打撃力の要になることは間違いありません。
また、頼れる主将の花井ですが、彼も母親の前では年頃の男の子らしくぶっきらぼうな態度を見せたりします。
母親もなかなかインパクトのある人物なので、この親子のやり取りも見所の一つと言えるかもしれません。
栄口 勇人(さかえぐち ゆうと)
二塁手で副主将。
中学時代はシニアチームに入っていたため硬球に慣れている栄口。
戦術理解度も高く、器用でなんでもそつなくこなせるありがたい人材です。
試合では主に犠打の指示を送られることが多いバント職人で、長打力のないチームの「スモールベースボール」を影で支えています。
いつも周りをよく見ており、気配り上手な人当たりのよい性格で、三橋のこともよく気にかけている様子。
試合中マウンド上で揉める阿部と三橋の仲裁役になることも。
彼の心の中の人物考察が、読者にキャラクターたちを深く読み解くヒントを与えてくれています。
泉 孝介(いずみ こうすけ)
中堅手。
スイッチヒッターで、足も速い選手。
長打力はないもののチャンスに強く、いつも打ってるイメージ。
作中の打撃に対する監督の評価は阿部のほうが高そうな感じですが、実際は泉のほうがかなり打っていると思われます。
クールな性格で周囲に無感心なように見えて、実は田島との野球に対する意識の差を気にしていたり、いつの間にかお互いに名前で呼び始めた三橋と田島の急激な距離感の変化に驚き、慌てて自分も名前で呼ばせたりと、意外と心中は穏やかでないことが多そうです。
また、泉のちょっと理解に苦しむ私服センスは読者の間でも有名ですが、そんな部分も性格と合わせて彼の魅力といったところでしょうか。
巣山 尚治(すやま しょうじ)
遊撃手。
堅実な守備と安定した打力が持ち味で、チーム内では花井に次いで体格にも恵まれています。
打順は主にクリーンナップでいつもいい働きをしてくれているのですが、どんなこともソツなくこなせるタイプのため、逆に注目されることが少ない存在となっているような気も…。
落ち着いた性格でどこか大人びたところもあり、言わば「縁の下の力持ち」「いぶし銀」といった言葉がぴったりです。
しかしそんな巣山も、神に二度と食べないと誓ったほどま○゛い高級プロテインを目の前にしたときには周囲が心配するほどの動揺を見せていました。
このシーンはアニメではカットされていたので、ぜひコミックスで確認していただきたい
また、おしゃれに気を配っていたり料理が得意で普段から自分でお弁当を作るなど、かなりギャップがある人物です。
(他の登場人物は今後少しずつ追記していきます)
最後に
すべからく「ヒーロー」だった野球漫画の主人公たちではなく、「普通の若者たち」がみんなで目指す甲子園。
「おおきく振りかぶって」はそんなテーマがぴったりな、素敵な作品です。
私はこの作品を観ると、日常の疲れや荒んだ心が洗われるような、学生時代に戻ったようなそんな気持ちになるんですが、ほかの皆さんはどうでしょうかね(^_^)
ほかにも面白い野球漫画はたくさんありますが、まずは私の一番のお気に入りを紹介しました。
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